東芝問題と特定建設業
東芝は4月24日、社会インフラ事業など、4つの主要事業を分社化すると発表しました。
4つの主要事業とは、インフラシステムソリューション社関連(社会インフラ)、
ストレージ&デバイスソリューション社関連(電子デバイス)、
インダストリアルICTソリューション社関連(情報システム)、
エネルギーシステムソリューション社関連(エネルギー)をいい、
東芝本体には経営管理と研究開発の部門だけが残ることになり、
社員数としては8割に当たる約2万人が新しい事業会社に移ることになるそうです。
この分社化の背景として、特定建設業許可の更新の問題があります。
ここでは、特定建設業許可に関して、東芝問題と絡めてお話ししたいと思います。
そもそも建設業許可とは何でしょうか?
建設業を営もうとするものは「軽微な建設工事」のみを請け負う場合を除き、
建設業許可を受けなければならない、と建設業法で決められています。
言い換えれば、ある程度の規模の建設工事を請け負うには、建設業許可を受ける
必要があるということです。
更に、建設業許可は一般建設業許可と特定建設業許可に分かれていて、
特定建設業許可は一般建設業許可よりも、より大規模な工事を請け負うことが出来ます。
特定建設業許可が必要とされる工事の規模は下記の通りです。
発注者から直接請け負った1件の建設工事につき、下請けの合計額が4,000万円(税込)以上
(建築一式工事は6,000万円以上) となる下請契約を締結して施工する場合は特定建設業許可
が必要 、とされています。
言い換えますと、元請で大規模な下請工事を発注する立場の大規模建設事業者は、
特定建設業許可が必須であるということです。
許可は工事業の種類毎に取得する必要がありますが、
(株)東芝 が保有している特定建設業許可は、
「建築工事業」「電気工事」「管工事」「機械器具設置工事」「電気通信工事」「水道施設工事」
の6種類です。
建設業許可の免許は5年で更新の時期を迎えますが、
東芝が現在所持している建設業許可の期間は、平成24年12月13日~平成29年12月12日
であり、今年の12月に更新時期を迎えます。
もし更新が出来ない場合には、上記6種類の工事が出来ないこととなり、
例えば、東京電力福島第一原発の廃炉作業を含めた大規模工事が受注出来ない事態と
成りかねず、国家的な問題となる可能性もあります。
なぜ特定建設業許可の更新が出来なくなる可能性があるのでしょうか?
東芝がウエスチングハウスの経営破たんによる損失で債務超過に陥る見通しであることと、
建設業許可の要件として、請負契約を履行するに足りる財産的基礎を有すること
が求められていることによります。
具体的な特定建設業許可に係る財産的基礎の要件は下記の通りです。
次の4つの条件を全て満たすこと
- 欠損の額が資本金の20%を超えないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金が2,000万円以上であること
- 自己資本の額が4,000万円以上であること
債務超過の場合では、自己資本の額4,000万円以上の条件を満たすことが
出来ない可能性があるため、やむなく分社化の結論に至ったと考えられます。
要は、更新を諦めて、分社化により新たな会社を仕立てて、特定建設業許可を取り直す
ことにしたということです。
日本を代表する「東芝」という巨大企業といえども、一旦歯車が狂った場合には、
存続すら危ぶまれる事態に陥る可能性があるということです。
今回の事態で、東芝の社員の方々の努力で積み上げてきた1兆円もの資産を、
一瞬で吹っ飛ばしてしまいました。
私は東芝の社員の方々の苦悩と怒りをおもんばかりです。